ナレッジ 2019/06/04

成功循環サイクルで強い組織を創る

組織内が悪いサイクルに陥っていないか

多くの組織は結果に拘るあまり、よい結果が導出されなかった際に、その要因の特定ではなく、誰の責任であるのかという犯人捜しを行いがちである。そうなると人は自己防衛本能が働き、重要であるが不都合な事実や情報を隠すようになり、組織としての構造的な要因分析がなされないまま、行動変革も進まない状況に陥る。

マサチューセッツ工科大学 スローンスクールPh.Dダニエル・キム教授が提唱する「組織の成功循環サイクル(The Core Theory of Success)」においては、これを悪い循環(Bad Cycle)としている。このようなサイクルに陥ると、組織としての能力(Capability)を高めるための、“学習機会“が得られず、環境変化への対応力が高まることはない。それどころか、組織内メンバー間に不信感が生まれ、組織を飛び出す人材や、あきらめて無関心となってしまう人材も現れてしまう怖れがある。

「急がば回れ」が本当の強い組織を創り上げる

結果に対して即物的な反応をとるのではなく、しっかりとした相互信頼関係の構築から始めることが、持続的な成長を実現しうる組織創りの一丁目一番地である。お互いを認め合う関係性を構築する(「関係性の質の向上」)。ここで言う“関係性の質”とは馴れ合いの仲良しクラブを創るという意味ではなく、本音ベースでの対話を繰り返し、よりよい納得解を得るという「思考の質の向上」を実現するための礎を創るということである。喧々囂々、侃々諤々お互いの考えをぶつける際に、その結果が人物否定に繋がらぬよう、相互信頼を築くことを意味している。

よい思考から生まれた計画はよい実行をもたらす。人は自分自身が納得したことでなければ、本気で取り組むことができないものである。従って“よりよい納得解”が得られた場合には、その計画を即実行し、また結果を鑑みながら即修正するという流れが生まれるようになる。

それぞれの「行動の質の向上」が図られることで、最終的には結果の質の向上に繋がる。

何故今、「成功循環サイクル」なのか

右肩上がりにマーケットが成長していた時には、その“風”を適切に掴まえる(乗り遅れない)ことで結果を導出しやすかった。指令本部が定めた戦略・戦術を具体的なアクションプランに落とし、それを着実に実行しているか否かをモニタリングしていれば、一定の成果がもたらされた。だが成熟期には、これまでの経験値から導き出されるセオリーが通用しない。指令本部へ情報を上げ、それを分析し、最前線にフィードバックをしていては環境変化のスピードに追いつかず、機会損失となってしまう。

指令本部は大局観を持ってリソースを動かすのみで、基本は最前線部隊が局地戦にしっかり勝っていくことが、結果として大きな成果をもたらすと考える。そのためには指示待ち姿勢から脱却し、各自が考えを持ち、それを部隊内で擦り合わせ、洗練させる癖をつけることが必要である。

そのような組織風土を醸成するためには、近道を求めることなく、「成功循環サイクル」に則り、「関係性の質の向上」→「思考の質の向上」→「行動の質の向上」を図るべきである。